空間デザイナーに興味がある学生さんから、「実際のところどのくらいきついですか…?」と恐る恐る訊かれることがあります。その質問の背景として、デザイナーというとよく漫画であるような徹夜続きで、机の上にエナジードリンクが大量に置いてあって、何日も家に帰ってない…みたいなイメージがあるのかもしれません。そういう環境が現実にあるのかというと、あるのですが、僕は幸運なことにそこまでの環境に置かれたことはありません笑
今回は空間デザイナーとして3社を渡り歩きながら10年働いた僕が、空間デザイナーがどのくらいきついのか解説したいと思います。
そもそも空間デザイナーとはどんな仕事か?
「空間デザイナーです」
これは「クリエイター」や「グラフィックデザイナー」にも言えることなのですが、その言葉の指す範囲が広いために、結局そう名乗られても実際に何をしている人なのかが判明しない…という場面が多々あります。空間デザイナーとは具体的には何をする人たちなのでしょうか?
空間デザイナーは資格があるわけではないので、広義で言えば空間に関わる業界でデザインに従事していれば空間デザイナーと言えるかもしれません。例えば東京ビックサイトや幕張メッセ等で行われる展示会のブースをデザインする「ブースデザイナー」やお店をデザインする「店舗デザイナー」、CMやドラマ、映画などの映像の舞台美術を手がける「美術デザイナー」、住宅の内装を考える「インテリアデザイナー」などなど、空間デザイナーと言っても様々な活躍の場があり、それゆえにそれらを一括りにして「きついかどうか」を評価するのはすごく無理があることだというのがわかると思います。
きついってどのくらいきついのか
そこまではきつくないかも?
それから、学生さんがよく仰る「きついですか?」の「きつい」というのは、どのくらいのきつさを想定しているのでしょうか?残業ばかりしているときつくて、毎日定時だと楽なのでしょうか。
僕は定時で上がりながら「本当に今日はしんどかった」と思う日もありますし、日付が変わるまで残業した日でも「けっこう楽だったね」と笑っている日もあります。
だから、おそらく学生さんなどが「きついですか?」と尋ねるときの「きつい」というのは単純に労働時間のことだけではなくて、上司先輩からのプレッシャーや、怒られる頻度、責任の重さ、労働環境の過酷さなど、「働いていて快適か不快か」の総合得点を聞いているのだと思います。
それで言うと、多分「入った会社によるけど僕はそんなにきつくない」と言うのがなるべく正直な答えになるのかなと思います。命に関わる仕事じゃないし、取り返しはつくし、仕事をすることで健康被害があるわけでもないし。
残業がある時はあるし、ない時はないです。
僕は普通の会社員のデザイナーですが、ここ2週間は毎日定時で上がっています。
忙しい時は毎日23時上がりだったりもします。
きつくて面白いか、楽で退屈か
どっちがいい?
逆に皆さんにお尋ねしますが、きつくて面白い仕事と、楽で退屈な仕事ならどちらがいいですか?
往々にして面白い仕事は大抵きついし、楽な仕事は退屈なものです。
デザイナーの仕事の中でも、どちらのパターンも存在します。
大手企業の仕事や某夢の国の仕事は、色々規定が厳しく、空間デザインをするにしても使わせてもらえる色が厳しく制限されているので緊張感があります。ただそれがきついかというと、むしろ表現が限られている分楽じゃん、と僕は思ってしまったりするのですが。一方で、完全に自由を与えるられている仕事の方がきついかもしれません。ここぞとばかりに自分のやりたかった形や表現したかった手法を詰め込んでしまうので、自分が自分にブラックな要求をしてしまうというか(笑)
楽な仕事で言えばひたすら片方にあるデータをコピーして決まったところに貼り付けていくだけ…と言う単純作業を1000回やるような仕事があったりするのですが、あまりにも作業が楽なので「これはもうデザイナーがやる必要はどこにもなくて、アルバイトでもできるな…」と思ったりもしました。だいたい、デザイナーを志望する人間は何か面白いことがしたくて、何か表現がしたくてやってきた人たちなので、その人たちが一番きついと思う仕事というのは実は単純作業なのではないでしょうか。
【結論】きつい時もあるけど楽しい!!
きついけど面白い!
空間デザイナーでもきつい時はあります。
クライアント都合で、いきなり仕様が変わって残業…と言うこともあるし、こちらのミスで発注したものが現場に届いていなくて顔面蒼白…..と言うこともあります。どっちも相当きついです。でもそういうトラブルはどんな職種にもあることだと思うので、あまり空間デザイナーならではの苦痛ではないのかな、とも思います。
ならではの辛さで言えば、デザインが上手く決まらないことによる辛さがありますが、これはもう自分がこだわって頑張るしかないし、そうやって出来なくて苦しくもがいている間しかデザイン力は上がらないので、必要な時間だと言うこともできます。さらに言えばこの「デザインが降りてこなくて悩み続ける」ことはデザイナーをやっている限り引退まで続く事象なので、それが本当に嫌ならデザイナーは向いていないかもしれません。
冒頭で述べたように空間デザイナーと一口に言っても様々な職種がありますし、また会社によってもきつさ度合いは全く変わってくると思うので、一概には言えないとしか言いようがないのですが、少なくとも僕は「空間デザイナーってきついですか?」と志望する学生さんに質問されたら「きついこともあるけど、すごく面白いよ」と答えるようにしています。
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