「自分はデザイナーに向いているのか?」
デザイナーになるかどうか迷っている学生だけでなく、今現在デザイナーとして頑張っている人でもこう思うことがあるのではないでしょうか?
今回は、デザイナーとして様々な業界のデザイナーと関わってきた僕が実体験として感じた「デザイナーに向いている人の特徴7選」についてお伝えしたいと思います。
集中力がない人
ひょっとして、素質あり?
意外に思われるかもしれませんが、集中力がない人にはデザイナーの才能があります。
もちろん集中すること自体は作業の質を上げるのに必要な要素ですし、誰しも何かに夢中になって気づいたら時間が経ってしまっていた!という経験はあるでしょう。
しかし、実際にデザイナーとして働いてみると、「集中してしまう」ことで損をするケースが非常に多いことに気づきます。
その理由を挙げるとキリがないのですが、「デザインを判断するのに様々な角度から検討する必要があるから」「複数のプロジェクトが同時進行するポジションなので、違う案件のタスクが次々やってくるから」「クライアントの思惑一つで今進んでいるデザインがひっくり返るから」などなど…。
集中し過ぎず、少しクールな視座で全体を見渡す姿勢がデザイナーには求められます。もちろん仕事中にぼんやりとしていてデザインが進まないのでは困ってしまいますが、あっちもこっちも気になってしまう注意力散漫な人は、むしろデザイナーの素養があると言えるでしょう。
自分の世界を「持ってない」人
こだわりが大切じゃないの!?
例えば、あなたが「ディズニーランドが好きな店舗デザイナー」だったとしましょう。ある時クライアントが「ディズニーランドのような内装のカフェを作りたいのでデザインをお願いしたい」という依頼をくれました。あなたは俄然やる気が湧いてきて、早速色々なアイデアが頭を駆け巡ります。
あなたはディズニーランドのどのエリアの世界観で作りたいかをクライアントにヒアリングしたり、依頼にないようなことでも「こうしたらもっと素敵になるのに!」というアイデアがあれば提案するかもしれません。どうしたらディズニーランドのようなリアルな街並みを作ることができるかを必死に考えて、少しでも理想に近づけるように工夫を凝らすでしょう。その姿勢はデザイナーとして100点だと思います。
ところが、仕事はそうしている間にも次々とやってきます。「50年代のアメリカンダイナー風のレストランを作りたい」「漆喰が似合う和風の居酒屋にしたい」「中華スチームパンク風の看板を考えて欲しい」
あなたはその全てに対して同じだけの情熱を注ぐことができるでしょうか?
実際、デザイナーをしているとクライアントの数だけ世界観があり、自分の趣味趣向とはかけ離れたようなデザインを提案しなくてはならない場面はいくらでもあります。だからこそ、デザイナーは常日頃から食わず嫌いをせずに様々なデザインを取り入れることに時間を割きます。そうすることで、出来るだけ自分の世界や先入観を持たず、ニュートラルな目線でデザインを始めることができるのです。
人と関わるのが好きな人
話すのが苦手なデザイナーもいっぱいいる
ひょっとしたらデザイナーというと、ひたすら黙々とパソコンやスケッチブックに向かい続けているイメージを持っている方が多いかもしれませんが、それは誤解です。
むしろ優秀なデザイナーほど社交的で、人とコミュニケーションを取ることが好きな人が多い印象があります。
その理由として、デザインの仕事というのは一人では完結しないから というのがあります。デザインというのは問題解決の手段なので、デザイン依頼というのは今困っている人がいるということです。その人にとっての問題をどうしたら解決できるのかを考えるのがデザインという仕事の基本ということになります。
イベントのチラシを作りたい人は、集客に困っています。クローゼットを作りたい人は収納に困っています。飲食店の改装をしたい人は今の内装に不満があり、困っています。クライアントがどんなふうに困っているのか?どうすれば解決できるのか?要望に対して解像度の高い提案ができるのはクライアントに丁寧なヒアリングができたデザイナーだけです。
ちなみに、直接クライアントとやりとりせず、営業を介して仕事を貰う体制のデザイナーも大勢いますが、彼らはクライアントと話す機会がなくとも、クライアントの要望を営業から適切に聞き出していかなければなりません。そのプロセスはクライアントに対するそれと変わりません。言葉にしてみると当たり前ですが、クライアントの要望を丁寧に掬い上げることができるデザイナーが、クライアントに喜んでもらうことができるのです。(そして、それが言葉以上に難しいので、多くのデザイナーが頭を悩ませながら働いているのです)
好奇心旺盛な人
ワクワクしていたい!
40代、50代を過ぎても活躍されている大御所デザイナーはまるで子供のような好奇心・探究心を持っています。一緒に打ち合わせしていても、「それ、なんのアプリですか?」「その服綺麗ですね。どこで買ったんですか?」と本当に視界に入った新しいものが気になって仕方がないのです。
新しい電化製品。行ったことのないお寺。知らないパワースポット。中学生の間で流行っているゲーム。海外の不思議なお祭り。興味の対象は非常に広く、とどまることを知りません。正直言うと一緒にいて少し疲れるほど(笑)
好奇心旺盛だからデザイナーになれたとも言えるし、デザイナーとして働くうちに好奇心旺盛になったとも言えるかもしれません。デザイナーは”今ここにない”新しい価値を創出する仕事です。それはウェブデザイナーでもロゴデザイナーでもプロダクトデザイナーでも同じことで、すでに誰もが見たようなデザインを再発明しても誰もお金を払ってくれません。
クライアントが、ひいては世の中の人が「おっ」と言うようなデザインを日頃から発想するにはどうすればいいか。それは常に自分の知らないことを知ることだと断言できます。
例えばあなたが車のデザイナーになったとしたら、今市場に出ている車や、モーターショーに展示されているコンセプトカーを研究していればそれで万全なのでしょうか。いいえ、トップデザイナーは自分とは全く関係ないと思われるようなジャンルでも喜んで飛び込んで行きます。西洋絵画も、仏像も、天体観測も、なんでも見て吸収して、自分の中の「デザインの引き出し」にしまっておくのです。
また、違う言い方をすると、デザイナーは常に何かしらのプロジェクトを抱えていて、「新しいデザインを思いつかないとヤバい」状態にいます。
なんでもいいから、自分に刺激を与えてくれるものはないか。藁をも掴む思いで仕事中でもプライベートでも考え続けているので、自然と好奇心旺盛な人になっていくのかもしれません。
熱しやすく冷めやすい人
(飽きちゃったな…)
あなたは「熱しやすく冷めやすい人」でしょうか?
前述の「好奇心旺盛な人」に通ずるところもありますが、熱しやすさも冷めやすさもデザイナーにとっては必須ではなくとも大事な素養です。よく見かける光景ですが、完成して世の中に出た作品に対して、デザイナーは驚くほど無関心です。無関心というか、冷めている、に近いかもしれません。
数えきれないほど打ち合わせをして、図面を何十回も書き直したCMがようやくオンエアされても、デザイナーは驚くほどそっけなく、せいぜい一瞥して「あーやっぱり白の方が良かったね、そこ」みたいなことを言うくらい。
実際問題として、デザイナーが一つのプロジェクトに関わる時間は長くはありません。テーマパークを丸ごとデザインしたり、競技場をデザインするのではないかぎり、プロジェクトの期間は1週間〜3ヶ月ほど。
例えば居抜きの店舗のデザイン提案の仕事があったとして、デザインを考えて、図面を書いて、提案書にして、提出するまでの納期は多くて2週間くらい。それは当たり前のことで、新しい店舗が出来上がるまで、抜け殻の店舗のお金はオーナーが払い続けているので、一刻も早く新しい店舗をオープンさせたいわけです。
それは店舗デザインのみならずあらゆる業界でも同じことが言えるでしょう。仕事には納期があり、そしてデザインが決まらなければ仕事は進みません。
だからこそ、デザイナーは新しい仕事が来たときに、一気に発火する必要があります。気分が盛り上がってくるのを待つ..なんて悠長なことをしている時間はどこにもありません。
「どんなご依頼ですか?どんなデザインにしたいですか?」
新しい仕事ができるということそのものにワクワクできる。
これはデザイナーの必須条件なのではないでしょうか。
細部に気がつく人
妥協はNG!!
「もうこんな感じでいいかな…」と思ったら、それがそのデザインの終わりです。
終わりというのは、良くも悪くも完成ということです。逆に言えば、「こんな感じでいいかな…」と思いながら続けてしまったデザイン業務は惰性であり、無駄です。惰性は結局のところせっかくのデザインを悪くする要因になります。
デザイナーが手がけるデザインの全てが100%力を出し切ったものではありません。
野球でピッチャーが常に全力投球しているわけではないのと同じです。常に高いコンディションで仕事に臨めるように、プロは無理はしても無茶はしません。
むしろ、自分の全てを出し切ったデザインの仕事が、デザイナーにはいくつあるでしょうか。前述の通り、デザイナーは実に限られた納期の中で、さらに他の業務と並行しながらデザイン業務に従事している為、一度妥協をするとキリがない世界と言えます。
「見栄えが少しだけシンプルになっちゃうけど、そんなに見られる箇所でもないし、ここは簡単にして終わらせちゃおうかな」という誘惑は、常にあります。デザイナーは日々その誘惑に勝ったり、時には負けたりしながら(笑)デザインに向き合っています。
よく、「そんなところ誰も見ていないんだから、いいじゃん」と呆れたように言われることがあります。確かにそうかもしれません。実際、本当に誰にも見られない箇所だったりすることはままあります。
でもそれは人から見えるかどうかとか、評価されるかどうかはあまり問題ではないのです。
どちらかと言うと、自分の問題です。
妥協する経験を重ねていくと、デザイナーとして腕が落ちる。これは僕個人のこだわりではなく、デザイナー誰しもが体感としてわかる話だと思います。「妥協慣れ」は本当に怖くて、気づかないうちにデザイナーを蝕みます。確かに、細部を端折ってもバレない。次もまたちょっと楽に済ませる。やっぱりバレない。そうしているうちに筋肉が劣化していくみたいにデザイン力が落ちていくのです。
デザイン力は厳しい審美眼に晒されて磨かれ続けないと鍛えられません。厳しい先輩デザイナーの元にいるデザイナーの方はラッキーですが(笑)そうではないデザイナーは己で己を律し、自分のデザインのクオリティを担保していかなければ将来必ず先細ります。
逆に細部に気がつき妥協しない人は、自分で自分を磨くことでデザイナーとして開花していきます。
美しいものが好きな人
美しいものを作りたい
色々書きましたが、これが一番大事かもしれません。
美しいと感じるかどうかは個人の主観で、美しいの基準も人それぞれでしょう。
それでも、デザイナーはなるべく多くの人に美しいと思われる色や形を追求しなければいけません。その苦しさと向き合うのもデザイナーの宿命だと言えます。
見事な夕焼けが見えた時に「あぁ、綺麗ですね。ほら、あっちの水色とピンクが混ざり合ってるところとか…」と夢中に、そして真剣に空の美しさを感じているデザイナーを見ると、「いいデザイナーだな」と思います。
別にそれが美術館でも車のディーラーでも日本庭園でもいいのですが、美しさに対する感度や、美しいものが好きだという個性はデザイナーの素養に直接関係があると私は考えています。
【結論】あなたはデザイナーに向いているのか?
向いていなくてもいい
今回はデザイナーに向いている人の特徴を7つ挙げていきました。
多くが当てはまった人も、あまり当てはまらなかった人もいたでしょう。ただ、勘違いして欲しくないのは、これらの項目に該当しないからといって、デザイナーになれない訳では全くないということです。
結論を言えば、あなたがデザイナーに向いているかどうかは正直どうでも良いのです。それは瑣末な問題なのです。仮にデザイナーに向いていなくても、デザイナーになりたいのであればなればいいし、デザイナーになったなら、時間が経つにつれて自然とデザイナーに向いた人間になっていくということです。
自分だけのこだわりをデザインに押し付けなくなるし、人と関わるようになります。これまでより色々なものに興味を持つようになり、美しいってどういうことなんだろうと悩むようになります。つまり、デザイナーになることで、デザイナーに”向いてゆく”。
もしかしたら、それはあらゆる職業に言えるかもしれませんね。
もしあなたがデザイナーになったら、あるいは現職でデザイナーだとしたら、いつか一緒に仕事できる日を楽しみにしてます。
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